教育勅語の闇
|
要点:(1) 教育勅語の骨子は、国民主権と内心の自由を否定し、政府に忠誠を誓い戦時には命も捨てろという要求(2) 天孫降臨の神話を史実として、主権在君の根拠に据えている (3) 無難そうな家庭道徳も、親子・長幼により全ての人を序列づけ 「目上」 への服従を説き、DVを正当化しているだけ (4) 日本が他国より本質的に優れていると言うことで、民族差別の種をまいている (5) 「天皇が命じたから守れ」 とする事自体が天皇の絶対化で、人民主権と相容れない (6) 「良い事も書いてある」 は言い訳にならない。正しい事と嘘や間違いを混ざっているのはかえって危険であるし、 プロパガンダの常套手段。 例え良い事でもわざわざ教育勅語を使って主張するのが間違い |
YouTube動画こちらもどうぞ→ |
教育勅語の世界・父と娘編(5分40秒)教育勅語はどのような形で下々の臣民に 教えられたのか、当時の女子修身教科書を 用いてご紹介します。 |
|
教育勅語のここがダメ(2分19秒)お急ぎの方向けに、最重要の2点に絞り 説明しています。 |
||
教育勅語の世界・良い事も書いて編(2分2秒)「良い事も書いてある」 の詭弁っぷりをさくっと コミカルに。息抜きにもどうぞ。 |
|
復刻版の 『釈明』 によると、この 『勅語衍義』 は 「時の文相芳川顕正氏より其の年の十月三十日に渙発された「教育勅語」の解釈を作るようにといふ相談を受け」 (『釈明』 P282)、書いた原稿を文相など要人に回覧のうえ 「畏れ多くも内務大臣を経て 天覧に供し献つたのである … 而して御下賜あらせられたのである。「教育勅語」 の解釈は六百余種にも上つて居るやうであるけれども、 天覧を悉くしたのは独り此の 『勅語衍義』 のみであった」(『釈明』P288) 。 著者の自己申告だけでなく、文部省が後年出した小冊子もこの 『勅語衍義』 が学者や文部省関係者の閲読を経ている旨述べています(吉田熊次 『我が国体と教育勅語』 文部省、1935年、P19)。 |
原文 | 現代語訳 (当Webサイト作成者作成) | 原典画像 リンク/注 |
|
朕惟フニ我カ皇祖皇宗國ヲ肇ムルコト宏遠ニ德ヲ樹ツルコト深厚ナリ 太古の時に当り、瓊瓊杵命、天祖天照大御神の詔を奉じ、降臨せられてより、列聖相承け、神武天皇に至り、遂に奸を討じ逆を誅し、以て四海を統一し、 |
朕がおもふに、わが御祖先の方々が国をお肇めになつたことは極めて広遠であり、徳をお立てになつたことは極めて深く厚くあらせられる 昔むかしニニギノミコトが天の祖先アマテラスオオミカミの命令を奉じて地上に降臨されて以来、数々の聖人を経て神武天皇の代に至り、ついに悪者を討伐し逆らう者を殺し、4つの海を統一し… |
48枚目 注: 瓊瓊杵命 =ニニギノ ミコト |
|
億兆心ヲ一ニシテ世々厥ノ美ヲ済セルハ 我国の鞏固なる所以は、億兆心を一にして、以て 天皇陛下の命令に従ふこと、恰も四支の忽ち精神の向ふ所に従ひて動き、毫も渋滞する所なきが如くなるにあり、 抑々国家は一個体にして、唯一の主義を以て之れを貫くべく、決して民心を二三にすべからず、… |
国中のすべての者がみな心を一つにして代々美風をつくりあげて来た わが国が強固である理由は、国民全員が心を一つにして天皇陛下の命令に従い、まるで手足が頭脳の意のままに滞りなく動く点にある。 そもそも国家は一個体であり、唯一の主義で貫くためには国民の多様な意思を決して許してはならない。 |
52枚目 | |
此レ我カ國體ノ精華ニシテ敎育ノ淵源亦實ニ此ニ存ス 我が皇祖皇宗の国を肇めらるゝ、極めて宏遠に、又其徳を樹てらるゝこと、甚だ深厚なり、而して下臣民たるもの、亦従来心を一にして、忠孝の道を尽くすは、即ち我邦の名誉にして、其万国に卓絶する所以、実に此に存す、是故に我邦の教育は、此に基きて施さゞるべからず |
これはわが国柄の精髄であつて、教育の基づくところもまた実にここに在る 皇室の先祖が国を始め統治し続けているのは日本SUGEE!なので、下々の臣民が今まで思想を統一して忠誠を捧げ尽くしてきた事は我が国の名誉であり、日本が世界のどの国よりも圧倒的に優れている理由はこの点にある。なので我が国の教育はこれを基本にしなくてはならない。 |
54枚目 |
|
原文 | 現代語訳 (当Webサイト作成者作成) | 原典画像 リンク/注 |
|
爾臣民父母ニ孝ニ 国君の臣民に於ける、猶ほ父母の子孫に於けるが如し、即ち一国は一家を拡充せるものにて、一国の君主の臣民を指揮命令するは、一家の父母ノ慈心を以て子孫に吩咐すると、以て相違なることなし |
汝臣民は父母に孝行をつくし 臣民にとっての国家の君主は、子孫にとっての父母にあたる。つまり、国は家族を拡大したものなので、君主が臣民を指揮命令するのは、一家の父母が愛情をもって子供に命令するのと何の変わりもない。 |
57枚目 注: 吩咐(ふんぷ)= いいつけ、 指図、命令 |
|
兄弟ニ友ニ 兄姉は智識経験ともに弟妹に勝れるを常とす、是を以て弟妹は兄姉を両親の次ぎと見做し、能く之れに事ふるを要す、然れども兄姉は弟妹を奴僕の如く使役すべからず、唯々共に親和して相互の発達進歩を図るべきものなり |
兄弟姉妹仲よくし 兄や姉は知識も経験も弟・妹より勝っている。従って、弟・妹は兄・姉を両親の次の位において、よく仕えるべきである。ただし、だからといって兄姉は弟・妹を召使いのようにこき使うのではなく、ただただ共に仲良くお互いの発展進歩をはかるべきである。 |
67枚目 注: 事ふる= つかうる (仕える) |
|
夫婦相和シ 一家の安全は、元と夫婦の和合に基くものなればなり、然れば夫たるものは、妻を愛撫して、以て其歓心を得べく、又妻たるものは、夫に柔順にして、妄に其意志に戻らざらんことを努むべし |
夫婦互に睦び合ひ 一家の安全は夫婦の仲によって決まるので、夫は妻を愛撫して歓心を買うべし。妻は夫に従順にして、みだりにその意志に逆らわないよう努力すべし。 |
69枚目 | |
…婚姻の事は、…必ず先づ自ら熟思深慮し、併せて父母の許容を得て、後ち始めて決断するを要す、 …其配偶の甚だ不当にして、絶えて幸福を来たすべき望みなきときは、父母之れを説諭し、拒絶して可なり |
…結婚は…まず自らじっくり考え、あわせて両親の許可を得た後で初めて決断すべきである。 …その結婚がはなはだ適切でなく、とうてい幸福になりそうになければ、両親は説教して拒絶してもよい。 |
71枚目 | |
…夫婦は必ず業を分つの要を生ず、即ち夫は外にありて業務を営み、婦は内に居て家事を掌り… | …夫婦は必ず分業する必要がある。つまり、夫は外で働き、妻は家に居て家事をして… | 72枚目 |
修身は教育に関する 勅語の旨趣に基き児童の良心を啓培して其徳性を涵養し人道実践の方法を授くるを以て要旨とす 尋常小学校に於ては孝悌、友愛、仁慈、信実、礼敬、義勇、恭倹等実践の方法を授け殊に尊王愛国の志気を養はんことを務め又国家に対する責務の大要を指示し兼ねて社会の制裁簾恥の重んすへきことを知らしめ児童を誘きて風俗品位の純正に趨かんことに注意すへし 高等小学校に於ては前項の旨趣を拡めて一層陶冶の功を堅実ならしめんことを務むへし 女児に在りては殊に貞淑の美徳を養はんことに注意すへし 修身を授くるには近易の俚諺及嘉言善行等を例証して勧戒を示し教員身自ら児童の模範となり児童をして浸潤薫染せしめんことを要す |
|
小学校教則大綱 (1891年文部省令第11号) 第2条 | |
修身は教育に関する勅語の旨趣に基きて児童の徳性を涵養道徳の実践を指導するを以て要旨とす 尋常小学校に於ては初は孝悌、親愛、勤倹、恭敬、信実、義勇等に就き実践に適切なる近易の事項を授け漸く進みては国家及社会に対する責務の一斑に及ぼし以て品位を高め志操を固くし且進取の気象を長し公徳を尚はしめ忠君愛国の志気を養はんことを務むへし 高等小学校に於ては前項の旨趣を拡めて一層陶冶の功を堅実ならしめんことを務むへし 女児に在りては特に貞淑の徳を養はんことに注意すへし 修身を授くるには嘉言善行及諺辞等に基きて勧戒し常に之を服膺せしめんことを務むへし |
|
小学校令施行規則 (1900年) 第2条 | |
中学校に於ては中学校令の旨趣に基き小学校教育の基礎に拠り一層高等の程度に於て道徳教育及国民教育を施し生活上有用なる普通の知能を養ひ且体育を行ふを以て旨とし特に左の事項に留意して其の生徒を教養すべし 一 教育に関する勅語の旨趣に基き学校教育の全般より道徳教育を行はんことを期し常に生徒を実践躬行に導き殊に国民道徳の養成に意を用ひ我が建国の本義と国体の尊厳なる所以とを会得せしめ忠孝の大義を明にし其の信念を鞏固ならしめんことを期すべし |
|
中学校令施行規則 (1931年) 第1条 | |
国民学校に於ては国民学校令第1条の旨趣に基き左記事項に留意して児童を教育すべし 一 教育に関する勅語の旨趣を奉体して教育の全般に亙り皇国の道を修練せしめ特に国体に対する信念を深からしむべし |
|
国民学校令施行規則 (1941年) 第1条 | |
国民科修身は教育に関する勅語の旨趣に基きて国民道徳の実践を指導し児童の徳性を養ひ皇国の道義的使命を自覚せしむるものとす 初等科に於ては近易なる実践の指導より始め道徳的情操を涵養し具体的事実に即して国民道徳の大要を会得せしむべし 高等科に於ては前項の旨趣を拡めて一層之が徹底を期し特に職分を通じて公に奉ずるの覚悟を鞏固ならしむべし 女児に対しては特に婦徳の涵養に留意すべし 祭祀の意義を明にし敬神の念を涵養するに力むべし 我が国の政治、経済及国防が国体に淵源する所以を会得せしめ立憲政治の精神、産業と経済との国家的意義及国防の本義を明にして遵法、奉公の精神を涵養すべし 礼法の実践を指導し礼の精神を会得せしむると共に公衆道徳に付て適切なる指導を為し品位の向上に力むべし 躾を重んじ善良なる習慣を養ふに力むべし |
|
同 第3条 |
「…即ち我邦の名誉にして、其万国に卓絶する所以、実に此に存す」 (『勅語衍義』) 「大日本は、神の国である。…国の初めから、君と臣との分がさだまってゐるといふことが、日本の国の一番尊いところであります。 外国の歴史を見ますと、一つの国が起るかと思へば、やがてほろび、そのあとに、また別の国が起るといふやうなことを、何度もくり返してゐます。日本のやうに、一つの国が、天地のつづくかぎりさかえるといふことは、決して見られない」 (『初等科修身2』 文部省、1942年) 「この道は…わが国はもとより外国でとり用ひても正しい道である」 (教育勅語 文部省口語訳、1943年) |
日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。 | |
第一条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。 第四条 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。 |
|
第十一条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。 第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。 第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。 第十八条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。 第十九条 思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。 第二十四条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。 |
|
第九十八条 この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。 | |
日本国憲法 |
民主平和国家として世界史的建設途上にあるわが国の現実は、その精神内容において未だ決定的な民主化を確認するを得ないのは遺憾である。これが徹底に最も緊要なことは教育基本法に則り、教育の革新と振興とをはかることにある。しかるに既に過去の文書となつている教育勅語並びに陸海軍軍人に賜わりたる勅諭その他の教育に関する諸詔勅が、今日もなお国民道徳の指導原理としての性格を持続しているかの如く誤解されるのは、従来の行政上の措置が不十分であつたがためである。 思うに、これらの詔勅の根本理念が主権在君並びに神話的国体観に基いている事実は、明かに基本的人権を損い、且つ国際信義に対して疑点を残すもととなる。よつて憲法第九十八条の本旨に従い、ここに衆議院は院議を以て、これらの詔勅を排除し、その指導原理的性格を認めないことを宣言する。政府は直ちにこれらの詔勅の謄本を回収し、排除の措置を完了すべきである。 右決議する。 |
|
太字は転載者 衆議院会議録 1948年6月19日 |
われらは、さきに日本国憲法の人類普遍の原理に則り、教育基本法を制定して、わが国家及びわが民族を中心とする教育の誤りを徹底的に払拭し、真理と平和とを希求する人間を育成する民主主義的教育理念をおごそかに宣明した。その結果として、教育勅語は、軍人に賜はりたる勅諭、戊申詔書、青少年学徒に賜はる勅語その他の諸詔勅とともに、既に廃止せられその効力を失つている。 しかし教育勅語等が、あるいは従来の如き効力を今日なお保有するかの疑いを懐く者あるをおもんばかりわれらはとくに、それらが既に効力を失つている事実を明確にするとともに、政府をして教育勅語その他の諸詔勅の謄本をもれなく回収せしめる。 われらはここに、教育の真の権威の確立と国民道徳の振興のために、全国民が一致して教育基本法の明示する新教育理念の普及徹底に努力を致すべきことを期する。 右決議する。 |
|
太字は転載者 参議院会議録 1948年6月19日 |